カメリアの記事

意味があることやないことを綴ります

小説を書くのが難しくて困ってしまう

難しいことを言っていないでとにかく書いたらどうなんだ。というのは全くもってそのとおりなんですが、何も考えずに書くというのはまた違っていて「少しは考えて書いたらどうなんだ」となってしまいます。それにしても何がそんなに難しいのでしょう。

テーマ

まずはテーマです。テーマとは物語の最も重要な場所を駆動させる原理です。クライマックスで「正義は勝つ」のか「愛が全てを乗り越えさせる」のか「賢いやつが上手く生き残る」のか「愛を裏切ると破滅する」のか。そういった「表現すべき核」を決めないといけません。

これを決めるのが難しい。ああ、でも、今これを書きながら思い出したのですが、僕は何が書きたいかということについて「強い力で障害を乗り越えることを楽しむ」と掲げていますので、これでいいんですよね。この文についてもう少しよく咀嚼してみる必要があるように感じます。

でもそもそもテーマなんて決めなくても勝手に現れてくるものでもあります。何かテキトーに刑事物を書けばテーマはおおよそ「正義は勝つ」になるでしょう。作者が意識しているか否かに関わらず、テーマみたいなものはその中に必ずあるんだと思います。

ただ、作者がテーマに自覚的でろうとなかろうと、作品の随所でその片鱗を見せることになるのでしょう。そう考えるとどこかしらにはっきりしたテーマが存在していないと面白い作品にはならないような気がします。

コンセプト

コンセプトはあらすじに現れて興味を引きます。「あるマフィアのボスはオウムだった」「アインシュタインは生きていた」などとするとストーリーはともかく面白みを感じます。「古代ローマの風呂デザイナが現世にやってくる」のはヒットしましたがコンセプトだけでも面白そうです。

上手く決めれば話全体に新鮮みを持たせて面白くしてくれます。非常に強力なツールですが非常に難しいです。ともすれば突拍子もなくコミカルになりがちです。また物語全体に強い影響があるため思っているストーリーと相容れないかもしれません。

僕はここで足止めを食らうことが多いです。僕はシリアスな作品が書きたいのですが、コンセプトを頑張ろうとするとコミカルになってしまいます。そこにはある程度の諦めが必要でしょうか。強力なコンセプトを用いるのはスルーして考えるのがいいかもしれません。

とは言えありきたりではつまらない。ある程度は真新しさを感じさせるコンセプトが必要なのではないでしょうか。しかし「ある程度は」なんて中途半端なことを言っていては大したものは出来上がりません。かといっていつまでも考えているわけにもいかず、難しいところです。

キャラクターの内心の葛藤

先日の記事「自作品に満足できない理由が分かった」においてキャラクターの内心の葛藤が重要だと気づきました。出来事が起こっただけでは薄っぺらくて精神的ボリューム感が足りないのです。しかしこれの設定はまた難しいものです。

しばしば「何かを得るために何かを失う決断をする」という形で現れます。「愛のために地位も名誉も諦める」のか「宝を得るために仲間も何もかも失う」のか。何にせよ失うものは最も大切なもの(得るものを含めれば二番目に大切)でなくてはなりません。

この際、力をテーマの中心に持ってきた僕の作品だと最も大切で失うべきものは「力」になります。でも、それでは物語の根幹が崩れてしまうことに。安易に力を戻してはご都合主義です。一編の作品としてなら成り立つのですが、その先のことはそのときに考えるべきでしょうか。

読後感というのもありますから、僕の好みの「主人公は最強」という部分を担保しておきたい気はします。だからと言ってここでどんな展開や言い訳を用意しても、失った力が簡単に戻ったのではどうやったってご都合主義になってしまうのです。

キャラクターの内心の葛藤の、別の考え方

そもそも強い葛藤が必要なのであって、大切なものを失うこととは限りません。と言うか、キャラクターが一番大切だと思っているものなら何でもいいんです。例えば「何でも自分一人で片付けるという傲慢さ」や「恐ろしいことには関わりたくないという臆病さ」などがそれに当たります。

大切に思っていると言うと誤りがありますが、固執してコンプレックスになっていると言えるでしょう。この信念のようなものを払拭するために自分自身を乗り越える様は葛藤として現れます。これはキャラクターが欠点を克服するというシナリオです。

しかし僕の作品で少なくとも主人公に、目につくような欠点を与えたくないんですよね。作者としても感情移入しちゃうので、キャラクターがかわいいのです。スーパーヒーローであってほしい、と願ってしまいます(スーパーヒーローでも欠点があるものですが)。

とは言えそれはわがままでしょうか。どこでも欠点は推奨されます。欠点と言わずとも「寛容さの欠如」「勇気の欠如」などと言えばなじみやすい気がしますが、しかしここでは、何にせよ克服が必要な程度の欠点です。十分に立てて描かないといけないでしょう。

ストーリー

いろいろと書いているうちに僕の中で(不届きな決心が)固まってきた気がします。しかし案外に難しいのストーリーです。ここで言うストーリーは話の概略です。ログラインなどと呼ばれたりもします。最も単純なものなら「主人公がドラゴンを倒して姫を救い出す」というくらいのやつです。

ここで欲しいのが新鮮みです。ありきたりなストーリーではつまりません。新鮮みと言えばコンセプトですが、ここではひねりが欲しいところです。細かなひねりを多数加えるのではなく、大きなひねりを一つか少数。

「主人公がドラゴンである王を倒して姫を救い出す」とするだけでストーリーは大きく変わりますが、話がややこしくなりすぎていけません。話がややこしくなってボリュームがかなり増えています。短編では長い部類に入るのではないでしょうか。

ボリューム的には王の臣下がドラゴンと結託しているくらいがちょうどいい気がします。王がドラゴンとなるとストーリー全体に大きな影響を与えますが、臣下が結託しているくらいなら小規模で済むように感じます。ただ、それだけひねりとしては弱いでしょう。

短編

長編がなかなか書けないから、多少なりとも書きやすいだろう短編を書こうとしている現状で、長編に次ぐような短編を書くわけにはいきません。 1 ~ 2 万文字くらいにしたいところです。その枠の中でどれだけひねって複雑さを出すのか、そもそも出せるものなのか。

昨今思うのは 1 万文字くらいすぐに埋まってしまうことです。執筆速度の話じゃなくて。大して話が進んでないにも関わらず、何を書いているのか、気が付けばそのくらい書いています。描写したい事柄を手短なシーンで描く必要があります。ここが考えどころです。

丁寧に会話や地の文を重ねることで描くよりも、事件やトラブルなどの出来事として描いたほうが短くなることもあります。そのほうが鮮明に描き出すことができる場合もしばしばでしょう。それなのについ、穏やかに会話させてしまうのです。

テーマに返る

話を手短で鮮烈に伝える。そのためには、自分は何が描きたいのかしっかり認識しておく必要があります。それはここまで書いてきたことの綿密な積み重ねの上にあるのでしょう。テーマがあり、テーマを描くために必要な要素があり、そのまた下の要素がある。

結局のところ手を抜いていい場所が見つかりません。しかし手を抜かないことには話が先に進まない。はたまた、今はこうやって苦しむべきときなのかもしれません。愚直に進むにせよジタバタするにせよ、そのうち何かが見えてくるかもしれないのです。

そもそもこのブログ記事は、僕が小説制作をどう進めるのか思考するために書き始めたものです。そして事ここに至って答えが出ていない(不届きな決心がつきそうにはなっていますが)。つまりは悩み悩みやっていくしかないのでしょう。