カメリアの記事

意味があることやないことを綴ります

落書き - 慣用句って罪深い

書籍「微妙におかしな日本語」は実際に使われている慣用句について正解・不正解を解いたものだ。一概に正しいか間違いかを指摘するのではなく、間違いに見えるものでも端緒をたどって「間違いとも言い切れない」というようにしているのが面白い。

次の項目が立っている。

  • 物議を醸す
  • 物議を醸し出す
  • 物議を呼ぶ
  • 物議を起こす

「物議を醸す」がそもそもの使われ方だとしているが、文化庁の「国語に関する世論調査」や国研のコーパス、古くは 1902 年の正岡子規の著作にまで及んで、どれも間違いとする根拠はない、としている。

それにしても慣用句はずるい。既に知れ渡っているから似た言葉は間違いだぞ、と言っている。まるで商標登録。文筆活動をしている身なら新しい比喩を使うのは普通のことだ。醸し出したって、呼んだって、起こしたっていいはずだ。だけど既存の言葉に似ていたら「あ、◯◯の間違いだ」と思われてしまう。言葉の広がりが奪われている。

そうだろうか。多くの人にとって慣用句は言葉を広げている。多くの表現を与えることで言葉が豊かになっているはずだ。

これは慣用句が諸刃の剣であるということだろう。誰にでも容易に比喩表現が使える仕組みである一方で、新しい比喩表現の誕生を拒んでいるのだ。罪深いやつである。