これから夕食が始まる、というとき母がテレビに注目していて、夕食がなかなか始められなかった。母は食事が始まる直前になると何かし始めて食事が始まらないことがある。今日はテレビに釘付けになって長かった。腹が立った。苛々する。僕は昨日の思考日記に書いた一件で成長した気でいるから、許せるはずだと思って許すように心を動かそうとした。母の気持ちになってみたり、大したことじゃないと思ってみたりした。苛立ちは治まらない。意趣返しに僕は頬杖を突いてテレビを眺めていた。母がいただきますの声を出す瞬間まで頬杖を突いていた。僕はみっともなかった。ただまぁ母は鈍感なので僕の苛立ちにも意趣返しにも気付いていないだろうけど。いやしかし、僕は立派ではなかった。許しとは難しい。
