カメリアの記事

意味があることやないことを綴ります

報酬系を利用した面白さの考察

人は快感のために物語を読・視聴します。快感は報酬という形で与えられます。何か行動をした結果として得られる報酬が快感を呼ぶのです。このシステムは脳科学報酬系と呼ばれています。これを利用することで物語を面白くできるのです。とは言えここで紹介するのは既に知られている面白さの要素を裏付ける程度の話になります。古来我々は報酬系を利用してきていたのです。

さて、報酬を大きいと感じるとき。つまり快感が大きくなるときの条件は下のようなものです。

  • 不確実性
  • 報酬予測誤差
  • ワクワクする

それぞれについて見ていきます。

不確実性

スポーツやゲームで勝てる相手に勝ってもさほど嬉しくはありません。逆に勝てないと思っていた相手に勝つと大きな喜びが得られます。これはまたギャンブルをやめられなくなる仕組みにもなっています。普通は勝てないギャンブルだからこそ、勝ったときに大きな喜びが得られるという訳です。

つまり物語においても、不確実な状況で得られる主人公の勝利や幸福が、読者にも大きな喜びを与えるのです。大きな快感を得るわけです。上述のようにスポーツで勝てない相手に勝ったり、成就しないはずの恋が成就したり、得られないはずの宝を手に入れたりすることが、読者の快感を呼ぶことになります。

報酬予測誤差

思っていた報酬より大きな報酬を得たときに、より強い快感が得られます。思っていた結果より良いものが得られれば嬉しいものです。不確実性に通ずるところがあります。これもギャンブルの依存性を強化する作用を持っています。常なら勝って得られる報酬には予想がつきます。勝てればこれくらい、と。それが時に大勝ちしたとすると予想を上回る報酬が得られます。これはより大きな快感になるのです。

物語においても、主人公が予想どおりの勝利を収めるより、予想を上回る勝利を得られれば読者の快感は大きなものになります。このままでは負けるんじゃないかと思わせておいて勝利したり、同じ勝利したにしても誰かキャラクターが主人公を絶賛したりすると思いがけず嬉しくなります。

そういった勝ちが続くようになると、今度は予測の範囲内の勝利として快感が少なくなります。これが「飽き」です。常に意外性が必要とされます。

また、思っていたよりも報酬が少ないと快感が得られません。これは「がっかり」といった真理です。

ワクワクする

ところで、報酬系において快感を司るのがドーパミン作動性ニューロンなんですが「報酬が得られるかも」と感じている間はドーパミン作動性ニューロンの発火がどんどん増えていくそうです。これは「報酬が得られそうだけどまだ分からない」状態において期待が高まっていくことを示しています。

つまり物語においても、勝利を引き延ばすと、引き延ばしている間はどんどん快感が強くなっていくということです。シナリオの常道として勝利は一番最後に持っていくものですが、これには脳科学的な根拠があるのです。

総論

これらを合わせると「勝てるかどうか分からない相手と戦い続け、終盤で負けそうになって絶望したところで逆転大勝利+おまけ」というような形が理想の面白いシナリオなんじゃないでしょうか。どうです、ありきたりでしょう?