小説内の情報の一部をボカすことで奥行きを感じさせるテクニックがあるように思う。なんとなく思っているだけで、具体的にはこれから考えていくんだけど。
神は細部に宿る、なんていうのはディテールを細密に描くことで世界観全体が緻密な作りになっているように感じるというものだろう。それに対して情報をボカして提示することで、ありもしない奥行きが感じられてたりするんじゃないだろうか。霧に包まれていると、すぐそこに壁があったとしても、ずっと続いているような気がするはずだ。
宝のありかを示す魔法道具があるとして、その原理をボカして提示すれば見えている以上の奥行きが感じられてロマンチックだ。
ここで、世界設定の作り方の違いに注目したい。しばしば見かけるのは「世界設定の一式を作っておいて、そこから選んで読者に提示する方法」だ。これは作った世界に読者を案内する方法と言えるだろう。
それから他に「読者に提示する情報を決め、その後から情報の根拠(原理)を設定する方法」がある。読者が目にするものが先に来てその裏でつじつま合わせをしていく。テーマパークのような張りぼて感があるだろうか。
前者ではボカすものを選ぶことになるだろう。その点は悩ましいかもしれない。後者はボカす前提で設定を作ることになるだろう。もしかしたらボケた設定だけで実像は決めないかもしれない。
どちらにしても何をボカすのかが問題になる。写真や絵画にヒントを得るのは不純だろうか。つまり近景を細密に、遠景をボカすのだ。主人公にとって身近なことを細かく描くのに対して、縁遠く関係が薄い物事はボケた風合いにする。例えばスーパーでの陳列方法を詳しく描写し、政治の中枢については権謀術数を感じさせつつ不明瞭に。的外れではないような気がする。
このときの距離感はもっと精査が必要かもしれない。身近なことは作者として分かりやすいとしても、縁遠いものはそもそも見えにくい。意識してボカして描くには作者には明瞭に見えているほうがいいだろう。
魔法はどうだろう。魔法使いの主人公にとって実践や運用に関わることは関わりが深い。これに対して魔法に力を与える神は遠いことだろう。神がどんな存在なのかボカして示すことで魔法の背景にある世界観が奥行き深く感じられるように思う。
で、ボカすとはどういう表現技法なんだろう。単純に考えると、例えば実際にある物事の30%を描く、とかだろうか。だけど単に描く量が少ないだけでは描かれたものが全てのように感じられるだろう。なので匂わせが必要だ。
例えば魔法に力を与える複数の神の間に支配と従属の関係があるとしよう。従属神の魔法は支配神の力でキャンセルできる、などの事情があるかもしれない。このあたりについて例えば主人公が従属神からの毒魔法を受け、主人公が契約している支配神の力でキャンセルしたとして、その関係性を説明することなく、主人公が「おまえの契約神は俺の契約神に従属しているんだったな」などと言うにとどめる。神同士にどんな事情があるか分からないが、力の影響があるらしいというのが読み取れる。想像に任せるといいように思う。
ということで、主人公と縁遠い背景に言及せずいっそ説明不足で表面だけ描くような書き方をすることで、奥深さの演出ができるんじゃなかろうか、という話だった。