カメリアの記事

意味があることやないことを綴ります

単文と複文の効果

単文と複文の持つそれぞれの効果について気づいたことをまとめました。ここで言うのは「こういった傾向がある」くらいの意味です。

単文と複文の違いはテンポと速度感に出ます。音楽で考えると分かりやすいかもしれません。句点を一小節として考えます。

  • 単文は短いひとまとまりのフレーズが速いテンポで流れていきます。 J-POP などの歌謡曲はおよそこの作りになっていると言えるでしょう。
  • 複文は長いひとまとまりのフレーズが遅いテンポで流れていきます。ゆっくりとした拍打ちの中で早口に歌うようなイメージです。

単文で書いていくとテンポが良くなります。一文を理解することが容易だからです。複文では文全体を読み込み終わるまですっきりしませんが、単文ではごく短時間で読み込みが終わるためすっきりしやすいのです。反面、句点の都度、立ち止まる感覚があって速度感が失われやすいと言えます。

複文で複数のことを連ねると速度感が出ます。句点で停止することなくなく読み進めるため、複数の物事が一呼吸の中に収まるからです。反面、内包する単文が多すぎたり、修飾が多すぎると、理解に困難が生じます。速度感という優位性を失いテンポの悪い文章になります。

以下に同じ内容の文章について、およそ単文で書いたものと、およそ複文で書いたものを示します。読み比べてみてください。もしかすると上述が間違っているかもしれませんので。

おおよそ単文

ラルゴはエリックと対面する。
両者は剣を抜いて構えを取った。
差配役が高らかに試合開始を告げる。
エリックに動く気配はない。
ラルゴは意を決する。
地を蹴った。
ヒョウのように躍動して加速する。
エリックの間合いに入った。
その瞬間エリックが鋭い突きを放つ。
ラルゴは体をひねってかわした。
ひねった速度を乗せて剣をなぐ。
エリックはむしろラルゴに迫った。
飛び込むようにラルゴの脇を抜ける。
ラルゴは胸を焼きごてでなでられるような痛みを感じた。
片手で胸を押さえる。
とっさに振り返った。
既に神速の突きが迫っている。
死を覚悟した。
途端に足の力が抜ける。
尻餅をついた。
頭上を突きが通り過ぎる。
ラルゴは座り込んだまま剣をエリックののど元に突きつけた。
エリックは壁にぶつかったように停止する。
静寂の時が流れた。
差配役が広場にとどろく勝負の声を上げた。

おおよそ複文

ラルゴとエリックは対面し剣を抜いて構えを取った。
差配役が高らかに試合開始を告げるがエリックに動く気配はない。
ラルゴは意を決して地を蹴りヒョウのように躍動して加速する。
エリックの間合いに入った瞬間、鋭い突きが放たれた。
ラルゴは体をひねってかわし、ひねった速度を乗せて剣をなぐ。
エリックはむしろラルゴに迫り飛び込むようにラルゴの脇を抜ける。
ラルゴは胸を焼きごてでなでられるような痛みを感じた。
片手で胸を押さえ、とっさに振り返ると既に神速の突きが迫っている。
死を覚悟し、その途端に足の力が抜けて尻餅をついた。
頭上を突きが通り過ぎる。
ラルゴは座り込んだまま剣をエリックののど元に突きつけた。
エリックは壁にぶつかったように停止し静寂の時が流れる。
差配役が広場にとどろく勝負の声を上げた。