カメリアの記事

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中世ギルドと江戸時代の渡世人

中世ヨーロッパでは職人の職業ごとにギルド=組合が作られました。ギルドに所属する親方しか商品を販売することができない仕組みです。職人たちは親方について仕事するしかありませんでした。それは修行の場であり、また生活費を稼ぐ仕事場でもあったのです。

職人たちの中には、いくらかの期間ごとに街から街へ渡り歩く者がありました。遍歴職人と呼ばれています。彼らは街ごとに結成されているギルドに行くと挨拶の儀式をし、それに合格すると受け入れてもらうことができました。

挨拶の儀式はギルドごとに異なっていて、決められた型どおりに、一種のダンスのようなことを披露するものでした。この方をしっかり覚えていないと新たな街でギルドに迎え入れてもらうことができませんでした。

僕はその話を読んだときピンと来るものがありました。日本の渡世人も同じようなことをするじゃないか、と。渡世人と言えば僕の世代だと時代劇「木枯らし紋次郎」の紋次郎や、時代劇「水戸黄門」で風車の弥七がふんしている職業です。

渡世人は街を渡り歩き、各地を縄張りにしている元締めの家に身を寄せます。渡世人と元締めの間では挨拶が交わされます。これを「仁義を切る」と言います。国立国会図書館のレファレンス共同データベースには下のようにあります。口上については Wikipedia を参照してください。

博徒香具師(やし)などの初対面の挨拶をさす。その挨拶を互いに行うことを「仁義を切る」という。」 「口上をいうのには、体を斜めに構え、頭をすこし下げ、右手を前に出し、相手の顔を見る、という独特のポーズで行う。」 「口上のあと、お互いは仲間となる。」

遍歴職人と渡世人の双方に言及するウェブページはないようですが、僕はとても通じるものを感じます。「仲間同士」というつながりが今よりずっと強かった時代でありタイプの人たちだったのでしょう。案外に遍歴職人には任侠的な部分があったのかもしれません。